拝はい啓けい、藤ふじ井い樹いつき様さま：

あなたに会あう為ために、小お樽たるに来きました。

今いま、この手て紙がみはあなたの家いえの前まえで書かいています。

私わたしの知しっている藤ふじ井い樹いつきはあなたではありませんでした。

ここに来きて、ようやく全すべてはっきりしました。

私わたしの藤ふじ井い樹いつきは男だん性せいです。

そして昔むかし、私わたしの恋こい人びとだった人です。

彼かれは二に年ねん前まえ。。。

彼かれは今いま何ど処こにいるのかわかりません。

ただ、時とき々どき思おもい出だすんです。

何ど処こかで元げん気きでやっているかなって思おもうんです。

そんなつもりで、書かいた手て紙がみでした。

だから、何ど処こにも届とどかなくてよかったです。

あなたに大たい変へんご迷めい惑わくをかけしました。

本ほん当とうにすみませんでした。

彼かれと同おなじ名な前まえのあなたに合あってみたくて、

ここまで来きたけど、会あう勇ゆう気きが出でませんでした。

思おもえば、手て紙がみだけの間あいだからでした。

手て紙がみだけで失しつ礼れいさせていただきます。

拝はい啓けい、渡わた辺なべ博ひろ子こ様さま：

何なにも事じ情じょう知しらずに、ひどい手て紙がみを送おくってしまいました。

勘かん弁べんしてください。

その代かわわりに、一ひとつだけ耳みみ寄よりな情じょう報ほうを提てい供きょうします。

実じつは私わたしが中ちゅう学がくの頃ころ、同おなじクラスに同どう姓せい同どう名めいの男だん子しがいたんです。

ひょっとしたら、あなたの藤ふじ井い樹いつきていうのは、あいつの事ことではないでしょうか?

拝はい啓けい藤ふじ井い樹いつき様さま：

お元げん気きですか?

私わたしは元げん気きです。